子どもの個性はどう育てる?子どもの資質を育てる習い事の考え方【後編】

5.牧師先生から学んだ子育てQA
習い事を考え中の親

「うちの子に何を習わせたらいいんだろう?」

そう考えたことのあるお父さん・お母さん、多いんじゃないでしょうか。英語もプログラミングも学校の必修になっているし、周りが塾に行き始めると、なんとなく焦ってしまうこともありますよね。

前編では、子どもの個性とは何か、どうやって見つけていくのかについてお話を伺いました。後編では、多くの親が悩む「習い事」をテーマに、年間300冊以上の子育て本を読みながら2人の男の子を育ててきたせいこさんに、もっとリラックスして習い事と向き合えるヒントを聞いてきました。

前編はこちら:子どもの個性はどう見つける?才能ではない「その子らしさ」を見つける親の関わり方【前編】

せいこさんのお話を聞いていると、「あ、そんなに頑張りすぎなくていいんだ」とふっと肩の力が抜ける感覚があります。ぜひ最後まで読んでみてください。

プロフィール

せいこさん(仮名)
男の子2人の母。多い時は1年間で300冊以上の子育て本を読んだほか、論文やビジネス系の記事、子育てや教育関係のブログもたくさん読んで研究してきた。
長男は海外の大学に通う3年生、次男は難関校に通っている。
子育てでは「子どもの心の土台を豊かにすること」を大切にし、心の成長や個性の理解を軸に、さまざまな教育や子育ての考え方を学びながら実践してきた。
子どもの個性と向き合いながら育ててきた結果、2人とも好奇心旺盛で「学ぶことが好き」「前向き(ポジティブ)」「レジリエンス力が高い」「考える力がある」子に育っています。

しんいちさん(仮名)
小学校教員を経て、教育系会社の運営や、子どもの第三の居場所となる学び場(フリースクール)の運営に関わる。
教育現場での豊富な経験をもとに、今回のインタビューに同席いただき、補足コメントをいただいた。

1.習い事に「正解」はない。でも「目的」を持つだけで、迷いが減る

早いと0歳からでも始めることがある習い事。習い事は個性を伸ばす場?居場所?それとも将来のため?せいこさんに聞いてみると、「位置づけは人それぞれでいいと思う」と言います。

個性を発見する機会にもなるし、何かができるようになる場所でも、子どもの居場所でも、親が忙しいときに預ける場所でもある。ただ、せいこさんが大切にしていたのは、その目的を最初に持つことでした。

「水泳を習わせたときは、「海に入っても溺れないレベルになること」をゴールにして始めました。目的が決まっていると、子どもにも伝えやすいし、ブレずにいられるんです。」

「何となく習わせる」より、「何のために習うのか」がはっきりしているほうが、迷ったときに立ち返れる。それだけで、習い事への向き合い方がずいぶん楽になるそうです。

しんいちさん(教育現場からのコメント)

目的に縛られないことも大切です。せいこさんが子どもの性格や特性をよく観察し、タイミングを図って習い事を提示されていたことが、うまくいった大きな理由のひとつだと思います。目的と子どもの特性がうまく合わさると、習い事が「やらされるもの」ではなく「やりたいもの」になっていきます。

2.「将来役立つか」より「今の好き」を信じる。そのほうが、伸びる

せいこさんは、習い事は子どもの「好き」を起点に考えていたといいます。英語やプログラミングが大事と言われても、「本当に将来役立つかどうかはわからない」と。

「多様化している時代だから、関係ない仕事に就く可能性だってある。可能性を広げるものをやらせようとすると、きりがなくなるんですよね。」

だからこそ、英語やプログラミングより先に力を入れていたのが、思考力・読解力・母国語の力という「基本の土台」でした。自分で考える力をしっかりと身につけ、自分でやりたいかやりたくないか、意思を持てるようになること。周りが塾に行き始めても、「本人が納得して行くのがいい。そうじゃないと伸びない」と、ぶれずにいたそうです。

3.大事なのは習い事の提示の仕方

とはいえ、子どもに習い事を「やりたい!」と思ってもらうには、ただ待つだけでなくタイミングと伝え方も大事です。せいこさんは、押しつけではなく、子どもの気持ちが動く瞬間を待ちながら準備しておいて、提示していたといいます。

長男のときは、塾の情報を事前にリサーチしておいて、本人が「行きたい」と思ったタイミングで提示。長男が海外に行きたがっていたので、学ぶ必要性をさりげなく伝えながら興味を育てていきました。

「次男のときは、英語をやると可能性が広がるという話をしたり、英語に限らず他にも色々な体験会に連れていったりもしました。言葉よりも体験させることを重視していて、本人が「やってみたい」と思えるような機会を作っていました。」

「教わる形ばかりだと、子どもはやらされている感になる」とせいこさん。自分でやりたいと思えるよう、種をまいておくことを意識していたそうです。

英語も同じ。「嫌いにさせないこと」が、最初のゴール

おうち英語やインターナショナルスクールも検討しましたが、「当時はおうち英語をする環境を整えるのが今よりも大変だったことや、インターナショナルスクールに入れたとしてもそこで得た英語を維持するためには続けて通わせる必要があるため費用がかなりかかる」などと冷静に考えて、まずは母国語の力を育てることを優先したといいます。

英語は嫌いにさせないことが大事、とおっしゃっていた先生の言葉がとても響いていて。小学校のころは楽しい英語の音楽を流すくらいにしておいたそうです。

長男の場合は幼稚園のころから恐竜好きだったことから英語に繋がりました。カナダに三大恐竜博物館のひとつがあると知ったことがきっかけで「カナダに行きたい」と言うようになっていたそうです。中学1年でイギリスに行き、さらにイギリスに「行きたい」気持ちが強まったことで、本格的に英語を始めることになりました。

子どもが自分から動けるタイミングを見極め、焦らず育てる——その姿勢が、英語でも一貫していました。

4.「やめていい」と言える環境が、子どもの主体性を育てる

習い事をしていると、子どもが「やめたい」と言い出す場面、ありますよね。せいこさんのお子さんも、水泳がそうだったそうです。すごく行きたいという感じでもなく、波があった、と。

ただ、せいこさんは最初にこんな約束をしていたといいます。

「「その日の気分で行く行かないを決めるものではないよ」と最初に話していました。もちろん体調の問題があったり、本当に嫌な時は相談にのるから話してねという前提で。」

ルールを最初に決めておくことで、子どもも「嫌だけど約束だから」と自分で向き合えるようになる。これは習い事に限らず、日々の生活のなかでも大切にしていたことだそうです。

しんいちさん(教育現場からのコメント)

習い事はやめていいと思っています。「やり切らないといけない」という価値観を強く持つと、子どもが自分の気持ちより親の評価を気にするようになることがあります。まずやめられる環境を整えて子どもの性格に合ったルールにすることが、主体性を育てることにつながります。

5.その子に合った約束ごとを見つける。それが自分で動く力になる

日常のルールや約束ごとについても、せいこさんはひとつのやり方を「正解」とは考えていませんでした。大切なのは、ルールを「作ること」ではなく、その子に合った形を見つけること、と話します。

せいこさんの家では、テレビを見る時間をチケット制にしていた時期がありました。1週間に30分チケットを何枚か渡して、子ども自身が使い方を決めるというやり方です。

「見たいものが多い週は我慢して貯めて、少ない週に使う。そうやって自分で優先順位を考えて、交渉するようになったりもしました(笑)。」

ただ、せいこさんが強調するのは「チケット制を試して」ということではありません。「導入するときは、楽しく、ゲーム性を持たせて、子どもが自分で考えられるかを意識した」と言うように、この子にはこの形が合った、という話。子どもが自主的に計画を手帳に書き、そのスケジュールを実践する「子ども手帳」を試してみたこともありましたが、「うちではハマらなかった(笑)。諦めて別の方法を考えました」と、試行錯誤しながら子どもの特性に合う形を探し続けていました。

しんいちさん(教育現場からのコメント)

例えばテレビを長時間見るのを辞めさせたいとき。YouTubeやテレビは、人間の特性や脳、好みを徹底的に研究しているビジネスです。だから、ルールで規制しようとしても子どもとの関係が難しくなりやすい、というケースが多々あります。
「柵を立てる」と牧師先生はおっしゃいます。ではどんな策がいいのか?子どもの個性によって合う柵はまったく違います。せいこさんのチケット制は、この家のこの子に合ったやり方として上手くいったものです。「うちでもチケット制を」というより、「その子に合った約束ごとを一緒に考える」という姿勢そのものが大切なのだと思います。

6.よく「見る」こと。子どもの無理に気づけるのは、親だけ

加えて習い事に悩むお父さん・お母さんへ、しんいちさんがさらに話してくれたのが、「子どもをよく見てあげて」ということでした。

1週間に8つも習い事をして、目をしぱしぱさせている子もいる。そういうときは大人がブレーキをかけてあげないといけない、と。「子どもが一生懸命やっている」「勉強も頑張っている」——親にとって良さそうに見えるとき、実は親の目が曇りやすい。

「子どもの発達段階や今の状況を見てあげることが大事。無理をしているなら、良いことに見えていても止めてあげないといけない。」

ここで大切になるのが、「これは親の意志なのか、子どもの意志なのか」を見極めるメタ認知※だとしんいちさんは言います。善かれと思って始めたことが、気づけば子どものためではなく親のためになっていた、ということはよくあります。

※メタ認知:自分の考えや行動を客観的に振り返ること。

習い事について「お金がかかるから、ちゃんと行ってほしい」という気持ちが生まれるのは自然なこと。でも、それは結局親の意志になっていないか?と問い直す視点が大切です。

7.心の土台さえしっかりしていれば、能力はあとからついてくる

習い事に関するアドバイスとして、せいこさんが最後に話してくれたのはこの言葉でした。

「英語やプログラミングなどの能力は、いくらでもどうにでもなる。でも心や考え、精神が柔軟にゆるやかに育まれているか——それが最も大事な根本。その子の生まれ持った性質や才能となる部分は、子どもの頃に作られたものがそのまま育っていく。だからそういう資質を大切にしたい。」

せいこさん自身も、何か迷ったときには「心を守れればいい」という目標に立ち返っているそうです。

「心配や不安、子どもへの良かれとする思い——色々と浮かんできますが、「心さえ守れれば、他の問題は横においておこう」と思えると、私自身もすごく楽になれました。」

8.まとめ——習い事で大切にしたい視点

後編を通じて見えてきたせいこさんの子育ての軸は、とてもシンプルでした。

  • 習い事をする「目的」を最初に持っておく
  • 将来より「今の好き・今の資質」を大切にする
  • 子どもが自分で「やりたい」と思えるタイミングと伝え方を意識する
  • 継続が必要な学び、必修科目のようなものまずは「嫌いにならないこと」を目指す
  • やめることを否定しない。やめられる環境を整えておく
  • 「これは誰のため?」とメタ認知を持ち続ける
  • 心の土台が育っていれば、能力はあとからついてくる

習い事に迷ったとき、「何のためにやるのか」という問いに立ち返ってみてください。きっと、お子さんに合った形が見えてくるはずです。

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